診断士じみへんのアパレル業界独り言

アパレルの経営、会計、税務に関する話

【SPAについて②】SPAに関わる商品調達におけるプレイヤーで今後生き残るのは?

10月24日

各大手ファッション小売り業が、10月に決算発表を行っている。良品計画が2022年8月期、しまむらが、2023年2月期上期の決算発表を行った。

良品計画は、衣服、生活が低迷し、減益。
2022年8月期(2022年10月13日発表)
https://www.ryohin-keikaku.jp/ir/presentation/
増収減益。増収の内訳は国内が103.7%、海外が120.0%。衣料・雑貨、生活雑貨の販売低迷が影響しているとのこと。衣服は、前年比93.1%、生活は、96.8%であるが、特に第4Q(6~8月)において、衣服が前期比91.0%、生活が85.8%と大きく失速。後半盛り返したファーストリテイリングと対照的である。また、下期においては、海外売上の約8割を東アジアが占めるが、その中でも中国ロックダウンの影響も大きく受けた模様。
営業利益においては、これまでの価格戦略上の失敗の中で、円安や輸送費上昇等の影響等調達コスト増大により、減益が余儀なくされている。
堂前社長の重点課題・取組みにおいて印象的であったのは、
総利益率49%の商品構成(2022年8月期は47.2%)を目指して、商品改革を進める中で、
①安定的で、ユーティライゼーション稼働率)を高めた生産を行うため、工場との直接取引を推進し、2024年8月末までに直貿比率を現在の20~30%から80%までに高めるとの方針を打ち出している。
②100均が高価格帯商品の展開を行う中で、500円~1000円の低価格帯商品の打ち出しを行う。そのために、商品を絞り込む。
➂都心店舗での空間インテリア商品等の拡充やコンビニ等での商品展開等店舗の展開の拡大。
①に関しては、いわゆる三菱商事ファッションや丸紅ファッションリンク系等の商社の中抜きが推進されると推測するが、品質維持等を含めた直貿対応の本部スタッフの増員や海外での生産フォロー体制の構築が課題と考えられる。
②に関しては、実質的な100円均一の崩壊という環境下、大きなチャンスと思われる。
③に関しては、特にコンビニ等自社販路以外の展開とブランディングの関係が気になるところ。

しまむらは、自社開発、共同開発のハイブリッドで売上、利益ともに過去最高。
2023年2月期上期(2022年10月4日発表)
https://www.shimamura.gr.jp/ir/library/result/
増収増益で、上期では過去最高。しまむらは、自社開発ブランド(PB)とサプライヤーとの共同開発ブランド(JB)のハイブリッド、JBにおいて、インフルエンサー企画等を上手く挟み込み、客数や客単価を向上させる一方、PBで利益を確保。
しまむらの取組みの中で気になるポイントは、
①売筋商品を短期間で追加生産する短期生産サイクルの活用により、値下げが抑制できた点。
②売上高に占めるPB比率29.1%、JB比率8.8%、インフルエンサー企画は不明、キャラクター商品が10.1%。
①に関しては、中国のロックダウンを経て、同様の方針で調達を進めていくか否か。デカップリングポイントを設け、素材を予め調達する場合、サプライヤー(名岐アパレル系が中心かと)が構える生地を利用する等もあり得る。元々、売上総利益率が、34%台と一般的なアパレルと比べ低めのため、原価において、ある程度のバッファーを取引先が持っていると推測するが、今後は、更なる円安原価高騰対策に如何に対処していくか。ユニクロ良品計画と比べると、PB以外は、上代の操作がしやすいが、それにも限界が出てくるかと考えられる。
②に関しては、これまでも広告宣伝の仕掛け方等に長けたベンダーがおり、しまむらの得意分野かと思われるが、広告の仕掛けから商品の調達まで含めたワンストップの仕組みがしまむらの商品調達の原価となっている。

良品計画は、工場との直接取引化を80%を目標として積極的に推し進める等、生産においても、ユニクロ化していると言える。良品計画は、ベーシックな商品が中心であり、更には、品番の絞り込みも行い、工場のユーティライゼーション稼働率)等を考慮し、関係性の強化を強化して価値、品質を高める等原価に着目している調達を行っている。
一方、しまむらは、元々海外からの物流において直流化を進めているといった形の取組みはあるものの、国内ベンダーとの取引が多いと考えられる。その際、開発工程において、自社開発ブランドとサプライヤーとの共同開発ブランドの使い分けを行っている。企画内容にバリエーションを持たせ、トップラインを意識した仕入を行っていると言える。各店舗決まった数で種まき的な仕入を行い、売れ筋に関してはQR追加発注により、フォローを行う。自社生産機能を持たないZARA式のMDに近い。
尚、前回取り上げたアダストリアは、ファーストリティリングや良品計画の直接取引と、しまむらのベンダー共同開発のミックスと言える。
商品の調達、仕入にあたり、生産においては、直接取引を押し進める動きがある一方で、上流の企画・開発においては、ベンダーに依存する動きが加速してきていると言える。つまり、貿易業務等商品調達におけるハードルが徐々に下がるにつれ、商品開発において何ら役割を持たない商社やOEMメーカーは淘汰され、工場の中でも、原料等の確保に優れた工場が、ODMメーカーの中でも、企画にマーケティングも加えて提案できる先だけが生き残るのではないか。実際、ODMメーカーの場合、中国やアジアでは、企画機能を持った工場やテーブルメーカー、卸の境界線が無くなってきており、それらの業者が出店するアパレルBtoBのプラットフォームも進化しており、近年注目されているSHEINもそれらを活用していると考えられている。