診断士じみへんのアパレル業界独り言

アパレルの経営、会計、税務に関する話

【2023年を占う】2022年ファッション業界3大ニュース

2023年はファッション業界にとってどのような年になるのだろうか?まずは、2022年のファッション三大ニュースを振り返りたい。2022年ファッション業界は、概ねコロナ禍から回復基調にある中、原価高騰、SHEIN等の新たな脅威の躍進、更には、海外や業界の垣根を超えた再編等新たな動きがあった。

【1】円安・原料高と製品原価上昇全方位でコストアップ、どうなる?アパレル値上げ(WWDJAPAN2022年5月)
https://www.wwdjapan.com/articles/1363491

まず、2022年2月のウクライナ危機をきっかけに、原料高となり、その後、好景気アメリカのインフレ懸念から、日米の金利格差が拡大し、7月130円台から11月の150円前後に急激に円安が進行した。2023年の年明けには、再度130円を割る状況となり、円安は一服し、原油相場も落ち着いてきているが、インフレが思った以上にしぶとい可能性もあり、更に、製品納期の6~9か月前に原料発注を行う一般的なアパレルとしては、旧正月前後も現在の状況が、2023年秋冬の原価が下がる可能性は低いと考えられる。ワークマンは価格維持、ユニクロ無印良品等主要大手SPAが値上を表明している。2023年のポイントとしては、①低迷しているアパレル商品の約6割の生産をしている中国経済の状況、②チャイナリスクに備える各社のアセアン等の生産拠点移管の状況、③特にアセアン生産が進んでいる欧米の景気動向に伴う発注量の減少の状況等が挙げられる。特に、景気低迷を踏まえてか、中国工場への、中国ローカルアパレルからの発注や、欧米からのアセアンへの発注も減少している傾向であり、今後原料価格が下がることをを考えると、景気低迷の可能性もある2024年に向け安易に値上がしにくい状況となるだろう。値引抑制で粗利益率が向上してきた各社も大きく棄損する可能性もある。

【2】SHEINの躍進
売上高はユニクロ超え!?謎多き「SHEIN」に迫る!(WWDJAPAN 2022年9月)https://www.wwdjapan.com/articles/1423674

中国広州市場の巨大な生産・卸売市場背景をバックボーンにSNSやPLM等のDXの活用により、消費者にダイレクトに商品を届ける仕組みで、海外市場で成長を遂げてきたSHEINは、2022年10月の大阪、その後の東京と、2022年後半日本マーケットでの存在感が高まってきている状況である。2023年は日本マーケットでは海外Eのため、ダークホースとして予期しなかった大きな脅威になる可能性がある。しかしながら、中長期的には、中国生産背景のみ調達を行う場合、コスト高になる可能性があり、更なる一手が必要になるであろう。今後マーケットとして大きく成長が期待されているインドのZILINGO(本社は同じくシンガポール)等同じようなプラットフォームが出てきているが、今後の競合関係が気になるところである。
〔参考〕ZILINGOのHPhttps://zilingo.com/en/
また、SHEINに対して、日本のアパレルとしては、商品の品質の維持やCSR対応等で対抗していく必要がある。AIによる需要予測はかつては打ち出ししている企業もあったが、決して上手くいっていない。また、自社でテストマーケティングできない分、テナントやプラットフォーム等から得られる他社データ等を活用しつつ、草の根で売れ筋分析を行い、MD力に磨きをかける必要がある。

【3】業界再編とライセンス事業
マッシュHD ベインキャピタルに株式過半を譲渡 提携を機に事業規模拡大(繊研新聞 2022年11月)
https://senken.co.jp/articles/0bf67863-2aa8-4f89-bad1-e57a295506f6

セブン&アイHD そごう・西武売却へ 米ファンド・ヨドバシ連合で再建に着手 焦点は百貨店基盤の継続(繊研新聞 2022年11月)
https://senken.co.jp/articles/d9fee1a8-5591-4a0b-b088-9d8aff2ae555

アダストリア、「アロハテーブル」運営の飲食企業ゼットンを28億円で子会社化(WWDJAPAN 2021年12月)
https://www.wwdjapan.com/articles/1299417

2021年が三井物産インターファッションと日鉄住金繊維事業部の合併や、住友商事のスミテックス 蝶理子会社化、フォワードアパレルの解散、サンマリノ オンワード子会社化等商社、OEMメーカーの再編の年になったが、2022年は、海外販路開拓を図りたいマッシュHDのベインキャピタルとの提携や百貨店業態そのものの見直しに迫られたそごう・西武の売却、等様々な業界再編が加速している印象である。
更には、アダストリア 「フォーエバー21」を来春から国内展開 ライセンス事業を開始 強み発揮し顧客若返りへ(2022年9月)
https://senken.co.jp/articles/320d97c1-88cb-4123-a367-848dbb2d9e4c

ライセンスビジネスにおいて商社でも圧倒的な地位を持ち、米ABGと深いつながりを持つ伊藤忠商事のサブライセンシーとしてアダストリアが、脱ファストファッションを掲げ、日本再上陸を測る等、ブランドビジネスそのものの見直しを図る取組みも見られた。当該ブランドに関しては、否定的な見方もあるが、8割を占める日本企画次第で、ブランドイメージの刷新が図れるか、また、ゴールドウィンのTHE NORTH FACEのように、本国とは別のブランドコアを確立できるかが試されているとみることもできる。ブランド認知力が日本の企画とブランディングにより、マーケティングコストを上回るかどうかが、試されるところである。

参考過去記事:
SHEIN
jimi-hendrix.hatenadiary.jp
原価高騰
jimi-hendrix.hatenadiary.jp