診断士じみへんのアパレル業界独り言

アパレルの経営、会計、税務に関する話

【税制改正大綱】アパレルに関与するフリーランスはインボイス制度に対応するべきか?

12月16日

与党の令和5年度税制改正大綱が12月16日にまとまった。
(施行は、2023年4月~)
www.nikkei.com



 この中では、NISA枠の拡大等に注目が集まっているが、アパレルにとって重要なのが、消費税インボイス制度に関して、大手企業のアパレル商品企画等で関与するフリーランス免税事業者の取扱いであろう。
 インボイス制度は、公平性の原則から、免税事業者の益税解消のためのものであるものの、取引上の不利益(但し、クライアント側でも8割控除等の経過措置があるが)や、消費税納税に関する処理や手続きが新たに発生するため、抵抗の多いものである。特に、企画等で関与する免税事業者であるフリーランスは、仕入税額控除できるものが少ないため、抵抗感が強い。
 しかし、今回の税制改正大綱にて、免税事業者簡易課税制度に近い制度(2割特例)が導入される見通しとなった。課税売上高に対し8割仕入税額控除が出来るということは、簡易課税制度のみなし仕入率でいうと、第2種小売業と同じとなる。(ちなみに、簡易課税制度におけるフリーランスは、第5種でみなし仕入率は50%)つまり、仕入れた商品と同様の額が控除できるということで、時限措置とはいえ、それなりのインセンティブとなろう。
※2年前の課税売上高1,000万円以下等が条件
 特に大手企業と取引のあるフリーランスは、免税事業者もいずれ消費税納税は必要となることが考えられるため、(2023年3月末の登録申請期限の実質的な延長もあるが、)インボイス制度導入の10月には様子見にするにせよ、遅くとも経過措置3年の間には、適格請求書発行事業者として登録申請しておいた方が良いと考えられる。

 その際の制度が固まる前に仮に登録申請する場合の注意点としては、
①本来課税事業者となるために本来必要な消費税課税事業者選択届出書が令和11年9月30日までは提出不要とのことなので、免税事業者に戻ることが想定される場合には、提出しない方が良いであろう。(仮に、提出するにしても令和5年10月1日の属する課税期間、つまり、個人事業主の場合は、令和5年12月31日までに提出しておいた方が良いであろう。)課税事業者2年縛りがあるためである。
②事業用の店舗、社用車等100万円以上の固定資産(調整対象固定資産)の場合は、今回「3年縛り」の対象とならないと考えられているため、気にする必要はないかと思われる。(但し、1,000万円以上の高額特定資産(商品等棚卸資産を含む)を取得した場合は3年縛り。原則課税方式。)
③課税売上高だけが把握できれば、仕入税額控除が計算できるため、仕入に関しての処理(インボイス登録番号等適格請求書の確認等)についても、今の内に準備を進めておいた方が良いと考えられる。経過措置後の処理がスムーズに対応できるためである。
等が挙げられる。
 国としては、消費税導入の際に、抵抗を避けるため、免税点を設けたもののであり、免税制度を表向きに廃止できないが、実質的に免税事業者を無くしたいという考えが背景にあるはずであり、独占禁止法や下請法等を盾にして事業者が抵抗したとしても、課税の公平性という建前があり、その流れが変わることはない。免税事業者も、インボイス制度への対応に迷っている事業者も経過措置の3年が経過する前に準備をしっかりと進めて行く必要がある。