診断士じみへんのアパレル業界独り言

アパレルの経営、会計、税務に関する話

【グローバルSPAについて】ファーストリティリングの好調な業績と課題

11月1日

ファーストリテイリングの2022年8月期の決算が発表された。海外売上が半分以上を占める同社においては、為替影響が取り沙汰されることが多いが、それ以外にも、「LifeWear」のポジションが欧米で確立されつつことがアピールされる内容になった。

■2022年8月期(2022年10月13日発表)
https://www.fastretailing.com/jp/ir/library/earning.html
国内が減収増益、海外が大幅な増収増益。
売上収益の内、国内42%、海外58%と約6割が海外の収益。上期の欠品等が影響しているとのことだが、コロナ禍の影響による不確実性もあり、特に、難しい舵取りであったと推測される。
2021年9月は、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の拡大・延長による客数減と、気温が高い日が続いた為に秋物の初動が遅かった。
営業利益は、国内ユニクロが15.3%、海外ユニクロが14.2%、ジーユーが6.8%で合計で12.9%。前期比19.4%増(為替影響を除くと約14%増)。為替影響にもよるが、日本企業の課題とされる営業利益10%以上をしっかりと確保できている。ユニクロ海外の営業利益に関しては、売上収益の約48%を占めるグレーターチャイナの中国のロックダウン等の影響がなければさらに伸長したのではないか。
グレーターチャイナ以外の欧州、米国等も「LifeWear」としての認知度向上とともに、全体が底上げされている点は流石と言える。

ユニクロの強さは、よく言われるように、その「LifeWear」をコアとしたブランディングと定番型の商品構成が大きく影響している。定番型の商品構成の中には、全世界で展開できるものも多く、ユニクロ程の規模感があれば、コアのものに、ローカルMDを差し込むことができ、コアにおいてはスケールメリット等を活かした生産を行うことで、コスト、品質において他社を凌駕することができる。よって、ZARAH&Mのようにローカル対応で多少のローカル企画を確保し、店頭を常に変化させるSPAよりも効率性が高いビジネスモデルである。欧米でも、この「LifeWear」におけるリーダー的なポジションを確立の兆しが見えて来たことで、非常に模倣困難性の高いグローバルSPAアパレルになって来ている。

その中で、ユニクロ在庫回転率低下を指摘する記事や本があった。
会計クイズを解くだけで財務3表がわかる 世界一楽しい決算書の読み方 | 大手町のランダムウォーカー, わかる |本 | 通販 | Amazon

これは、これまで、大手商社は生産のプロセスには余り関与せず、在庫保有による金融商売をメインに取引を行い、販売ギリギリまで保有してもらっていたが、商社を商流から排除し、生産調達の完全直貿化を行うという構造改革を行い、仕入を前倒しすることにより、悪化したものと推測される。ベーシック商品を売り逃ししないようなMD設計上ある程度許容できる範囲であったことや、コロナのロックダウンによる生産地や物流の停滞を考慮すると、今期に関してはある程度許容されるかもしれないが、今後正常化していく上で、ZARAのようなファッションの陳腐化が早いブランド程気にするような内容ではないが、どのような在庫ポジションを構えていくのか気になる所である。生機、染色等原料段階でのデカップリングポイント上の工夫や縫製のキャパシティの確保等、更には生産地政策等、労働集約型のアパレル生産は常に課題がつきまとう。