診断士じみへんのアパレル業界独り言

アパレルの経営、会計、税務に関する話

【グローバルSPA】ZARA、H&M、UNIQLOのグローバル展開の違い

10月28日

10月27日の繊研新聞にて、
「グローバル大手小売りの直近四半期決算 インディテックスファストリは2ケタ増収増益」
https://senken.co.jp/posts/global-retail-221027
H&Mだけが苦戦している状況を伝えているが、これはMD上の施策の失敗の他にも、グローバルSPAの展開国の違いが影響しちているのではないか?

H&Mの2022年3Qの決算内容を見ると、原料や輸送費がかさむのと、値下げ販売による売上総利益の悪化の他、ロシア・ウクライナ情勢による影響が響き、営業利益が1.6%(ロシアの影響を除くと5%とのこと)と急激に悪化している。
対して、ZARAINDITEX、2022年上期の決算は、売上が昨年対比+24.6%、営業利益に相当するEBIT※で16.4%と好調である。
Earnings Before Interest and Taxesの略。利払前・税引前利益のこと。
また、ファーストリテイリングは国内が減収増益、海外が大幅な増収増益。売上収益の内、国内42%、海外58%と約6割が海外の売上となり、為替の影響もあり好調を維持している。

H&Mの売上地域別構成比は、2022年3Q(2022年8月)で77市場で展開しているが、ヨーロッパ54%、本国スウェーデン10%、アメリカ23%、アジア14%である。対して、ZARAINDITEXが2022年の半期決算(2022年7月)で、215市場に展開しているが、ヨーロッパ46%、本国スペイン14%、アメリカ20%、アジア20%。また、UNIQLOファーストリテイリングが、24か国に展開し、2021年決算(2021年8月)で、アジアが43%(アジアの内、グレーターチャイナが72%)、本国日本49%、ヨーロッパが6%、アメリカが5%弱である。
ビジネスモデルとしても、QRや空輸等物調達面でアジャイルな展開をしているINDITEXが、大きく展開国数を増やし、リスク分散も出来ているが、H&Mファーストリテイリングは生産、物流面で規模の経済(ファーストリテイリングQR化を進めているが)を働かせるためか、展開国は若干少ない状況。
グローバルSPAと言っても、基本的には、H&MINDITEXは、ヨーロッパ、ファーストリテイリングがアジアと、自国周辺の売上が大きく、逆に、アメリカはどの国も大きく攻め切れていない。

この1年は、景気の良いアメリカ、成長しているアジアが売上を牽引してきているが、H&Mも同じく、米国、そして、特にアジアが伸ばしてるものの、ヨーロッパ(東ヨーロッパが-22%、西ヨーロッパ・本国も-9%)が非常に苦戦していることが窺える。更に、ウクライナ紛争やエネルギー価格等物価高騰の影響を大きく受けECBの利上げの影響等今後も受けやすく、H&Mの業績は暫く低迷が続く可能性が高い。
INDITEXは不確実な時代の中で、全世界に供給できる物流体制を強みとした分散化の展開が出来ており、そういった意味でも、欧州、更には米国が低迷したとしても、H&Mと比べ影響は少ないのではないか?
一方、ファーストリテイリングが、2022年8月の決算発表にて、海外事業、特に欧州での進展についてアピールをしたが、欧州比率は未だ6%となっている。その中で、一番懸念されるのが、やはり、チャイナリスクである。日本に次ぎ、ファーストリテイリングにとって、大きな市場の中国も、ゼロコロナ政策やバブルの崩壊の危機といった爆弾を抱えており、中国一辺倒からの見直しの意味を含めて欧州での成果をアピールした可能性もある。